今回は、インターネットワーキングについて学びましょう。
インターネットワーキングとは、
複数のコンピュータ・ネットワークが中継ネットワーク機器によって接続され、
全体で一つのネットワークのように機能する
ネットワーク状態や技術・手法を指す言葉です。
英語の場合、冠詞によって一般名詞と固有名詞を使い分けしているのでInternetとThe internetを区別できますが、日本語では「インターネット」という場合、The internetをさす場合が多いでしょう。日本語では「ジ・インターネット」も「インターネット」も区別がつかないので、
いわゆるジ・インターネットのことを「インターネット」
冠詞のつかないInternetを「インターネットワーキング」
と表現する人もいます。
外資系や海外では冠詞のつかないInternetを指す場合にもインターネットという場合もあることを考慮しておきましょう。
確認しておきましょう。
インターネットという言葉には、二つの意味があります。
インターネットワーキングを利用して接続した複数のコンピュータネットワークから構成するネットワークのことを「インターネット」といいます。これは一般名詞です。いわゆる「インターネット」と呼ばれてる世界的規模のネットワークに接続していなくても「インターネット」です。
「ジ・インターネット」とはインターネットワーキングを利用して、全世界規模で国際的に広く相互接続されているネットワークの呼称です。いわゆるわれわれが日常的に「インターネット」と呼んでいるネットワークのことです。固有名詞です。
インターネットワーキングによって接続するネットワークの種類は、主にLANとWANに分けられます。
WANとは Wide Area Networkの略称です。
WANとは、LAN同士を接続するネットワークです。
WANでは、中継デバイスとして主にルータを利用します。
WANでは、PPP・ISDN・xDSL・フレームリレー・ATM・その他専用線や電話回線技術を利用しています
LANとは、Local Area Networkの略称です。
LANとは、特定の(任意の)範囲の局地的なネットワークのことです。
LANでは、中継デバイスとしてリピータハブ・スイッチ・ルータを利用しています。
LANでは、Ethernet・FDDI・TokenRingなどの技術を利用しています。
インターネットネットワーキングで使用する主な中継ネットワーク機器には、ルータ・スイッチ・リピータハブがあります。
ルータとはOSI7階層の物理層・データリンク層・ネットワーク層で動作するデバイスです。
スイッチとは、OSI7階層の物理層・データリンク層で動作するデバイスです。
リピータハブはOSI7階層の物理層で動作するデバイスです。
OSI7階層という言葉が出てきました。OSI7階層とはコンピュータネットワークを標準化している概念です。OSI参照モデルとも言います。これについてはまた後ほど述べることにします。
コンピュータネットワークの世界では、ネットワークを標準化して表す概念があります。
その代表的なものに、OSI参照モデルとTCP/IP 4階層モデルがあります。いずれも上位層になるほど利用者に近づきます。
OSI参照モデルは7階層で表現することからOSI7階層モデルとも呼ばれます。OSI参照モデルのデータリンク層はさらにロジカル・リンク・コントロール エルエルシー層とメディア・アクセス・コントロール マック層に分けられます。
TCP/IP 4階層モデルはOSI参照モデルほど細分化せず4階層で表現します。インターネット層はネットワーク層とも呼ばれます。ネットワークインターフェース層はネットワークアクセス層とも呼ばれます。
OSI参照モデルのアプリケーション層・プレゼンテーション層・セッション層は、TCP/IP 4階層モデルのアプリケーション層に対応します。
OSI参照モデルのトランスポート層とネットワーク層はそれぞれTCP/IP 4階層モデルのトランスポート層とネットワーク層に対応します。
OSI参照モデルのデータリンク層と物理層はTCP/IP 4階層モデルのネットワークインターフェース層に対応します。
OSI参照モデルでもTCP/IP 4階層モデルでも、ネットワークを抽象化して考えています。各ネットワークモデルの各層は、お互い同じレベルの層同士で直接通信しているような振舞いをします。アプリケーション層はアプリケーション層同士、トランスポート層はトランスポート層同士、という具合です。実際のデータの流れは送信側コンピュータ内で上位層から下位層へデータは渡され、物理層レベルで通信相手に伝わります。受信側のコンピュータは受け取ったデータを下位層からより上位層へ渡します。
任意の層での相違はその層で吸収します。例えば一方のコンピュータが1000BASE-Tのイーサネットで、もう一方が100BASE-TXだとしても、L2スイッチで双方を通信可能にしてあれば、ネットワーク層から上の層ではデータリンク層以下が異なるメディアであっても影響を受けません
現実のお仕事現場では、OSI参照モデルでの呼び名とTCP/IP 4階層モデルでの呼び名を「ごちゃ混ぜ」にして呼ぶネットワークエンジニアが多いようです。
そのほとんどは、トランスポート層より上の層をアプリケーション層と呼ぶか、もしくは、トランスポート層から上をアプリケーション層と呼ぶことが多いようです。
OSI参照モデルでも各層を物理層から順に、
レイヤ1・レイヤ2・レイヤ3・レイヤ4・レイヤ5・レイヤ6・レイヤ7
と呼ぶことも多いのですが、同様にこの実践的階層モデルでも、
レイヤ1・レイヤ2・レイヤ3・レイヤ4
と呼ぶことも多いです。
実際の現場では教科書的な呼び方で各層を表現しているのか、それとも実践的階層モデルで表現しているのか説明はまずないでしょう。そこでどちらの表現で呼んでいるのかを自分自身で読み取れる力を身につけることも課題のひとつです。
イーサネットは階層モデルのデータリンク層と物理層のプロトコルです。
FDDIやIEEE802.3・100BASE-Tはデータリンク層のマック層と物理層を合わせた層のプロトコルです。
TCP/IPと呼ばれているプロトコル群と階層モデルの対応を説明します。
TCP/IPプロトコル群ではデータリンク層のマック層と物理層でのプロトコルを指定していません。それゆえに、TCP/IPプロトコル群は、イーサネットでも、FDDIでも、フレームリレー上でも、ISDN + PPPダイアルアップ接続でも、同様に動作します。
イーサネットカードが持つマックアドレスと呼ばれる物理アドレスと、ネットワーク層で利用するIPアドレスという論理アドレスの対応を解決するアープ address resolution protocolとリバースアープ はデータリンク層のロジカル・リンク・コントロール層で動作します。
アイピー Internet protocolとアイシーエムピー Information control massage protocolはネットワーク層のプロトコルです。
IPはアドレス情報とルーティング制御を管理します。
ICMPはIPパケット処理の情報を報告するメッセージを提供します。ICMPを利用する代表的なアプリケーションはpingです。
ネットワーク層ではIP特有のルーティングで利用するルーティングプロトコルも動作します。
Transmission control protocol ティーシーピーとUser datagram protocol ユーデーピーはトランスポート層のプロトコルです。
TCPは信頼性のあるデータ通信を提供します。UDPには信頼性はありません。機能と構造が単純な分、TCPよりもオーバーヘッドの少ない通信を提供できます。再送などのエラー制御はより上位層のプロトコルが提供します。
TCPを利用する代表的なプロトコルに、HTTP・FTP・Telnet・SMTP・POPがあります。
UDPを利用する代表的なプロトコルに、DNS・SNMP・TFTP・RTPがあります。
中継ネットワーク機器をネットワークモデルに当てはめて見ましょう。
ルータとはOSI7階層の物理層・データリンク層・ネットワーク層で動作するデバイスです。
スイッチとは、OSI7階層の物理層・データリンク層で動作するデバイスです。
リピータハブはOSI7階層の物理層で動作するデバイスです。
インターネットワーキングを構成する技術に
• TCP/IPプロトコルスイート
と
• Ethernet
があります。
• TCP/IPプロトコルスイートは
OSI7階層のネットワーク層・トランスポート層・セッション層・プレゼンテーション層・アプリケーション層で動作する技術です。
• Ethernet
OSI7階層の物理層・データリンク層で動作する技術です。
もちろんインターネットワーキングを構成する技術はこれだけではありません。それらについてはまた別な機会に述べることとします。