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 > これは変だよ  > お地蔵様とキリギリス


 

むかし、むかし、遥か、銀河のかなたのことです。嵐に遭って片足をとばされてしまったキリギリスが、杖をつき、苦労しながら歩いていました。
 「あぁ、何で私だけがこんな苦労をしなければならないのか?」
 「自治体の福祉政策はなっていない」
とか、全て世の中が悪い・全て周りが悪いなど、そんなことを嘆きながら、ずっと歩いておりました。

茶屋が見えてきましたが、今のキリギリスにはお茶して一休みするお金もありません。茶屋の前を通り過ぎるとき、旅人が二人腰掛けているのが見えました。
 「デイリーミーティングに出ていましたよねぇ?。」
旅人の一人はもう一人の旅人に話しかけていたのですが、「自分に話しかけてきた」と思い込んだキリギリスは、
 「あー、ただでさえ歩くことでつらいのに、話し掛けないでくださいっ!。それともあんたが私の生活の面倒を見てくれるのですか?!あ〜〜ん?」
と語気も荒く、茶屋の旅人にあたりました。旅人が、
 「(あなたには)話し掛けていません。」
というと、
 「あっそ、ならいいんだよ!」
と、あたかも歩くのに忙しい私が勘違いするような話かたをしていた旅人たちが悪いと思っているようで、キリギリスの勘違いで怒鳴ったのを謝りもせず、歩いていきました。きっと勘違い・誤解をした自分より、勘違い・誤解をさせた?相手(他者)が悪い、と考えているようです。

先日の嵐で片足を失ったばかりのキリギリスは、足を失ってないキリギリスが1日で歩く距離を、三倍の時間をかけて歩きます。怖いのは、巣に持ち帰る餌を探しているアリに見つかることです。彼らに見つかると彼らの子供たちの待つ巣に生きたままつれてかれてしまうでしょう。今のキリギリスには抵抗する力がありません。

ずいぶん歩いていくと、道端にお地蔵様が立っているところにでました。お地蔵様が、
 「おぉ、キリギリスさんや、さぞや随分お疲れでしょう。私が見ているからここで一休みしていきなさい。」
お地蔵様が見ているところでは安心して一休みできそうです。キリギリスはお地蔵さまの勧めにしたがって、ここで一休みすることとしました。

「実はキリギリスよ。私は先日の嵐で失ったおまえの足がどこにあるかを知っているのだよ。」
と思いがけないことをお地蔵様は言ってきました。
 「えっ?お地蔵様、それは本当ですか? 私の足はいったいどこにあるのですか?」
 「それは、あの地平線のかなたの丹波の山の頂上にあるぞよ。」
とお地蔵様は教えてくれました。先日の嵐はとてもすごかったから、キリギリスのからだから離れた足をそんなところまで飛ばしてしまったのでしょう。今のキリギリスにはそこまでたどり着くのに、三ヶ月はかかります。 でもキリギリスは行くことにしました。また、
 「アリたちは巣に持ち帰る餌になるものならば何でも持っていてしまうから、休みなしでいかないとなくなってしまうかもしれないぞ。」
とも思っ思いました。そうと決めたら休んでいられません。
 「お地蔵様、有難うございます。」
早速キリギリスは出発しました。

三ヶ月かかって丹波の山の頂上についたキリギリスは、そこにキリギリスの足がないことを知りました。この三ヶ月間で、もしかしたら誰かが持ち去ってしまったかもしれないという可能性に気がつきもせず、
 「この三ヶ月間苦労はなんだったのか!」
ととても怒りが込み上げてきました。
 「あの地蔵め!うそを言いやがって!今から文句を言ってやる。」
とお地蔵様のところに戻ることしました。
 「コノヤロ、コノヤロ、コノヤロ、コノヤロ、コノヤロ、コノヤロ、コノヤロ、コノヤロ」
と心の中で怨を唱えながら、お地蔵様に文句をいうことだけを目標に急ぎました。

ここ三ヶ月の行程で足が鍛えられたのか、足のそろっているキリギリスと同じ一ヶ月の期間で戻ってこられました。もう、アリも怖くはありません。

お地蔵様は以前と同じところにいました。キリギリスが帰ってきたのを見て、
 「おぉ、キリギリスさんや、無事に戻ってこられて何よりでした。」
と、出迎えとねぎらいの言葉をかけました。キリギリスはそんなお地蔵様の言葉を聞きもせず、
 「あんたねぇ、仏に仕える身でありながらうそつきなんだよ!」
と怒鳴りまくり始めました。
 「山の頂上には足なんか無かったんだよ!○×△■?※#%★!!」
もうとてもここには収録できない汚い言葉を撒き散らしていました。

キリギリスが怒鳴っているのをお地蔵様はじっと黙って聞いていました。そしてキリギリスが怒鳴り疲れたところで言いました。
 「キリギリスさんや、確かに山の頂上にはおまえの足は無かった。しかし、あの山まで往復したことで、今のおまえは両足がそろっているキリギリスに劣ること無い、同じ速度で歩けるようになったはずだ。これは、失った足を再び手に入れたのと同じ事ではないかな?」
お地蔵様にそのように解説されたキリギリスは、
 「なるほど!」
と合点がいき、お地蔵様に非礼をわび、丁寧に御礼を言ってその場を去りましたとさ。

更新日:12 JUN 2004



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