本番前のラボテスト
ずいぶん昔のことである。
L2TPネットワークを構築した。本番ネットワーク構築前のラボ室内の実験用
ネットワークである。
LACとLNS間は拠点間ネットワークのつもりである。LNSから先はセンターネッ
トワークのつもりである。このセンターネットワークに市販のブロードバンドルーター
をおいてインターネット接続をした。回線にはNTTのBフレッツを採用した。
pppoeクライアントは拠点毎のPCをイメージした。pppoeクライアントはLACに接続し、L2TPネットワークを経由してLNSに接続、これがうまく行ったらインターネットのコンテンツが見える、という寸法だ。
ラボ室のある建屋とは別の棟の地下にBフレッツ回線が来ていた。しかし、これがど
う見てもNTT東日本が敷いて来た光ケーブルに見えない。敷地内のどこかにMDF
があってNTT東日本はそこまで敷いて、後はお客様企業の情報システムセクションが別な棟
の地下まで光ケーブルを引いたように見える。
私たちはそこからまた、建屋間にすでに敷設してある光ケーブルを通してラボ室まで回線を用意した。
フレッツスクエアには広帯域の動画コンテンツがある。Windows Media player
で繰り返し再生に設定するといつまでも再生し続ける。そこで、
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どの程度長く安定して視聴し続けられるか、
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実際のスループットはどの程度か
を確認するために複数PCで6Mbps動画コンテンツを再生した。
で、面白い現象が出た。平日の15:00を過ぎると18:00ごろまでまったく通信が
出来なくなるのである。ブロードバンドルーターの状態を見るとpppoeは確立
している。ただ、一度切ると再確立がなかなか出来ない。pppoeが確立してい
る間にインターネット上の任意のホスト宛にpingを実行してもほとんど失敗す
る。フレッツスクエアのサーバも同様である。
NTT東日本の提供するBフレッツ・ニューファミリータイプはベストエフォート
である。100Mbpsの帯域を複数のユーザーで共有するので、ほかのユーザーが
利用していなければ100Mbpsを体験できるかもしれない、というシステムであ
る。そこで、NTTの局舎内の同一100Mbpsポートに接続している他のフレッツ
ユーザーが、
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業務データをバッチでFTPなどで大量トラフィックを送っている
と考えた。これについては対処の仕様がない、とも考えた。契約をベーシック
にすれば100Mbps占有だ。しかし契約変更は悔しい。なぜならば常時速度が出
ないのではなく毎日15:00〜18:00の間なのだ。
またこの時間帯以外では60Mbps程度の速度がコンスタントに出ていることか
ら、LACルーターとLNSルーターの設定は間違っていない、と判断した。
ところがこれに納得しない方がいた。スキルも知識もありバリバリと仕事するお客様である。
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→L2TPで利用したルータの設定が悪いという疑いをかけられた
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→次に「フロー制御かもしれない。」と古いネットワークアナ
ライザーで観察するよう言ってきた。
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理屈抜き。
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つべこべ言わずに、さっさと言われた通りにやれ!
「どうにかしろ!」
ということなのだろうが、こちらで出来ることはし尽くした。
私は
「常時通信が出来ないのではなく、通信出来るときもある。」
という事象から、ルーターなどこちらのネットワーク機器(BBRからこっち)の問題ではないと考えた。そこで、
「フロー制御」の測定については
「そんな理由じゃないよ!他のトラフィックの影響だよ!」
と考えていたので、お客様企業側で僕の直属のボスにあたる人に相談して
「無駄なことはしない。やりたくない。」
と拒否の許可をもらう。だって、「フロー制御」を命じたお客様の推理は論理的でないから。お客様企業側で僕の直属のボスにあたる人もこれを了承してくれた。納得いかないのは「フロー制御」を命じたお客様。これ以来ずっと嫌われっぱなしさっ!
で毎日15:00から通信できなくなる原因は、
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→われわれでは手が出せないNTT網と考えた。
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→実はNTTではなく構内の網が原因だった。
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→MDFからBBRまでの経路が「直接」ではなく、複数建屋間や複数階間がVLANトランクで接続されていた。
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→他部署が使用しているVLANで多量のトラフィック(多分、バッチでFTPトラフィックを3時間程度)が毎日15時から発生していた。
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→QoS制御していないのでそのトラフィックの影響をまともに受け、通信不能になった。
ということである。
「フロー制御」を言った方はずいぶん知識がある方なのだが
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「当時の時点でNTT東日本が提供するBフレッツは、ニューファミリーもベーシックと同様、
100Mbpsポート占有している。」
ということを知っていたのではないか?、と考える。そして、その情報から私の推理を認められなかったのだろう。
「100Mbpsポート占有なのだから外のネットワークの影響ではない。こいつのセッティングが悪いんだ!。」
とね。頭がいいからゆえに、
「つべこべ言わず黙ったやれっ!!。」
ってタイプなんだろうな。まさか原因が自分の勤めている構内のネットワークに問題があったとは想像していなかったようだ。でも、詰めが甘い。よく考えれば判るのにこの度のこのお客様の推理は
論理的ではない。そしてこのような強引なお客さまで業者はいつも苦労する。教科書的知識はあっても実務・実用のネットワークに触れたことが無いんだろうな。
ニューファミリーの100Mbpsポート占有とは?
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→当時の時点でNTT東日本が提供するBフレッツは、ニューファミリーもベーシックと同様、
100Mbpsポート占有してサービス提供していた。
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→公正取引委員会がこれについて注意をした。
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→ベーシックのユーザーにニューファミリーと同額というサービスを提供せず、倍額を徴収し黙っていたのは変という論理。
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→2004年5月28日以降の申し込みについてはニューファミリーは複数ユーザでポート共用で対応し始めた。
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それ以前からのニューファミリータイプのユーぞーは二年間の猶予期間を経てポート共用に変更予定。
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→そのような対応に変更しながらも、公正取引委員会に対して不服を申し立てている。
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→ユーザー数が少ないときにはポート占有してもいいんじゃないかという論理
でも、僕がベーシックタイプのユーザーだったら、当たり前に文句を言うぞ!。倍額支払ってサービスが一緒なのだから。
おばけ
「常時、通信が出来ないのではなく、通信出来るときもある。」
「通信が出来ないのは、毎日15時以降と決まっている。」
のにもかかわらず、お客様の
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僕のルーター設定なり、ケーブリングを疑い、
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説明を聴こうともせず、
という態度に
お客様であるがゆえに
閉口した。
救いは、お客様側で僕の直属のボスが、
「常時通信が出来ないのではなく、通信出来るときもある、のならば、こちらのネットワーク(BBRからこっち)のせいではないです。原因はこちらではありません。もしこちらに原因があって、時間によって通信できたり出来なかったりならば、それはおばけです。」
と言ってくれたことだ。
最終更新日 09 FEB 2005