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F-Key考

※注 ロック式のペグについては述べていませんよ:追記 Sep 18 2007

シャーラーF-Keyについて、「1968年以降、云々・・・」とか「1972年以降、云々・・・」とか言う記事を見かけるが・・・

1977年に新品で購入した一本を含め、所有している1976年前期モデル(プレートシリアル)は2本ともこの写真のオリジナルF-Keyがついている。

これがOriginal F-keyだ!
  • シャフト根元に段差が無く直接ギアボックスになっており
  • Made in GermanySchallerなどの刻印は無い!

山野楽器吉祥寺店の望月君は、リットーミュージック刊の「Fender Stratcaster」やエイムックの「一冊丸ごとストラトキャスター」「絶対ストラト主義」で入手した知識で、

  • ギターが1976年生ですから、ペグはシャーラーF-Keyですね
なんて言っていたが違う!違うぞう! どうやらカスタムショップ含めて最近のUSA製・MEX製?Japan製しか見たことないようで、1976前期モデルのヘッドから出ているシャフト長を見て、
  • うわっ!長い!
なんて言っていたことから、本物のオリジナルF-Keyを見たこと無いんだろうな。

1976年後期モデル(ヘッドシリアル)には現在店頭で見かけるの現行品と同様の、

  • シャフト根元が膨らんでいて段差があり、
  • Made in Germanyと刻印がある
ものである。いわゆる、これがシャーラーF-Keyね。ただし、1976物と現行品と比べると、1976年物についているものの方が、
  • 金属カバーの厚さ(肉厚)・角の丸み(面取りのR・板金プレスのR)が大きく
頑丈・チャチくないように見える。1976年前期のオリジナルF-Keyのカバーと比べても遜色ない。現行品は・・・ぺらぺらな感じ。

現行MEX(USA), 1976年後期, 1976年前期
(L → R)
左から現行MEX(USA), 1976年後期, 1976年前期
現行MEX(USA), 1976年前期
(L → R)
左から現行MEX(USA), 1976年前期

比較写真には載せて無いが、リプレイスメントパーツとして購入した現行Fender JapanのF-Keyは、

  • シャフト長は1976後期とほぼ同長(少しFJの方が長い程度)
  • 上記以外のメッキ・セーフティポストの穴や溝切の仕上がり・ギア・カバーは現行MEXと同じ
である。

シャフト長

現行のFender USAFender Japanの双方がシャーラーF-Keyを使用し、またReplacement Partsとしてセット供給している。この現行シャーラーF-Keyにシャフト長が2種類存在する。上記の写真のようにMEX現行USA)が一番短いが、真ん中の1976年後期のものと同じ長さのシャフトのものも現行品で存在するのだ。実際に筆者は2006年にReplacement Partsとして購入したF-Keyのセットで、シャフト長の長いものを入手した。
※ Fender USAFender JapanF-Keyは店頭のパッケージが異なるが、中身は同じものと推測する。シャーラーがFender USAFender Japan用に、それぞれに別のラインを用意し供給するようなコストのかかることをするとは考えられないから。、当然工場でギターに実装されるものも同じものであろう。となると手元にシャフト長の異なる現行F-Keyがあるのだから、

  • Fender USAが短く、
  • Fender Japanが長い、
  • もしくはその逆、
という事ではなく、現行F-Keyのロット違いによってシャフト長の異なるものが存在する、と考える。

まぁ、コスト削減を考えると原料を少なくするというのが近道。金属棒を短くカットすれば、同じ長さの原料からより多くのシャフトが出来る。短くても使用できれば同じ価格で売れる。となると、Fender USAFender Japanという差ではなく、双方とも長いシャフトの在庫を使い切れば短いシャフトになるということだろう。オリジナルF-Keyでさえ、シャーラーF-Keyの採用以後も在庫消費まで相当の時間がかかっている。
※ 仮にシャーラーF-Keyが1972年に採用されたとして、1976年前期モデルにオリジナルF-Keyがついている事実からして、少なくとも消費に4年かかっている。

これからは短いシャフトに切り替わっていく、と見ていいだろう。当然、工場では一本のギターに異なるシャフトを同時実装することは無いだろう。しかし、補修目的でReplacement Partsを購入するときには注意!が必要だ。

※ ヒストリークギターのご主人によると、シャーラーF-Keyのストラトキャスターへの採用は1976年のヘッドシリアルから。それ以前は、オリジナルF-keyということだ。(追記:Sep 20 2007)

セーフティーポスト

Gibsonなどヘッドの両側にペグが並べてあるギターは通常、セーフティーポストの無いシャフトのペグである。Equipmentのページで紹介しているESP製Flying Yも、購入時はそんなペグであった。しかし、弦張替え時に端末処理が簡単なことから、セーフティポストのあるシャフトのペグに交換したくなり、ESPでStratocasterのようにセーフティーポストのあるシャフト を持つGOTO製ペグを特注したことがある。
※ 特注と言ってもそんなたいした事でなく、ギアにはめ込むシャフトをセーフティポストのあるFender 直列6連用のシャフトを両側3連用のギアボックスに入れるだけのこと。

そんなこんなで、セーフティポストが好みである。そこで、F-Keyのセーフティーポストについて述べる。

現行
現行品のセーフティポスト
1976年後期
1976年後期のセーフティポスト
1976年前期
1976年前期のセーフティポスト

比較すると、

  • 現行品は穴径が切り込み溝の幅より小さく、面取りが無い。
    これは、シャフト長が異なっても変わらない。Fender USA(MEX)でもFender Japanものも同じ加工である。.046の6弦がつらい。
  • 1976年後期は、穴径が切り込み溝の幅より少し大きく、シャフト頂点の穴に面取りがある。
  • 1976年前期は、穴径が切り込み溝の幅と同程度だか、切り込み幅も一番大きいので穴径も大きくなっている。また、写真では判らないが、切り込みの深さも一番深い。シャフト頂点の穴に大きく面取りがある。
    ※ 面取りというよりも窪み?穴より大きなドリルビットでくぼみを作り、その後縦穴を開ける、という加工であろうと推測する。

多分、セーフティーポストは、

  1. 穴の無いシャフトにドリルで穴を開け、
  2. その後、グラインダーや旋盤・ノコギリで溝を切り込む、
順で工作すると考える。なぜなら、溝が先だと溝幅より大きな正確な縦穴が空けられないし、ドリルビットが溝に挟まって折れる。
※ 先に述べたGOTO製ペグの特注も、まずは自分で穴の無いシャフトに穴を開けてみて、
  • 先に溝を切ると1/2の確率で真ん中に穴が開かない、
  • 溝にドリルビットが挟まり折れる、
ということを経験しているからである。

ポストを開ける前のシャフト頂点は、

  • 1976年前期では、穴を開ける前に窪みを付けていたか窪みのあるシャフトであったと考えられる。
  • 1976年後期では、穴を開ける前は平らであるようだが、穴あけ前に穴より少し口径の大きいドリルで窪みをつけていると推測。
  • 現行品でも、穴を開ける前は平らであるようだ。

1976年前期の幅の広さは、太目の6弦を張る場合にもストレス無く交換が容易なのだが、切込みを境に片側が折れるという事故もあっただろう。それゆえか、シャーラーF-Keyでは切り込み幅も小さく深さも浅くなったと推測する。

しかし、現行品の穴径の小ささは.046弦を張るのにきつい。面取りも無く、昔に比べて加工に手を抜いているな、という感じだ。

カバーの中・・・ギア

シャーラーF-Key
カバーをはずしたシャーラーF-Key
シャーラーF-Key 内カバーもはずす
更に内カバーもはずしたシャーラーF-Key
オリジナルF-Key
カバーをはずしたオリジナルF-Key

ギアは好みもあるだろう。1970年代にオリジナルF-Keyをロトマチックタイプに交換するのが流行った。これをすると、ヘッド側のシャフト穴を大きく加工する必要がある。シャーラーF-Keyの場合、最初からロトマチックと同じ大きい穴なので、ペグ交換の時のヘッド加工はいらない。

かつてジョーペリーは、1982年頃(ジョーペリープロジェクト時代ね)、月刊Player誌のインタビューで、
 「ペグはみんなが言うほど悪くないので(ロトマチックタイプ等に)交換しないで、オリジナルのままだよ。」
と言っていた。オリジナルF-KeyシャーラーF-Keyかは不明だ。

ギアの精度はシャーラーF-Keyの方がオリジナルF-Keyより遥かに良い。そこで、修理などでオリジナルF-Keyを現行のシャーラーF-Keyに交換する必要も出てくるだろう。この場合、ヘッドの穴加工が必要となる。

ゴトーなどのクルーソンタイプに交換する場合には、シャフト径が同じなので穴を広げる必要は無い。

ヒストリークギターのご主人は、このオリジナルF-Keyが壊れた場合を考えて、シャーラーとゴトー、それぞれに、
 「オリジナルF-Keyと同一寸法のチューナー」
を打診したそうだが返事は無かったということ。オリジナルF-Keyが壊れると、中古のオリジナルF-Keyをビンテージショップで探して来るか、ねじ穴もしくはシャフト穴の加工を覚悟するしかない。

ビンテージGibson レスポールのマニアの方々では、OLDクルーソンカバーとOLDクルーソンつまみギアにギアシャフトはゴトーのクルーソンタイプ、という組み合わせをする人達もいらっしゃるらしいが、ギア比が同じならばそんなことも可能。

F-Keyの場合、

  • 76年モデルなどかつての本物についていたシャーラーF-Key現行シャーラーF-Keyで、シャフトギアの交換は可能だが、
  • オリジナルF-KeyシャーラーF-Keyではギア比が異なり、シャフトギアの交換は不可能
である。カバーのみなら流用できる。
※ ギアは消耗すると遊びが大きくなりチューニング機能に支障が出てくるので交換の必要があるが、カバーの場合、へこみや傷程度で代える必要があるか?あんま意味ないね

Tunning機能

そうそう、e-bayとかで検索するとき、F-Keyは通用しないことが多い。あちらではF-Keyと言わず、F-tunnerということが多いようだ。

それはさておき、1976年後期以降のStratocasterからシャーラー製のF-keyになったわけだが、それまでのOriginalのF-Keyとどちらのほうが性能が良いのだろうか?

1982年ごろの月刊Player誌のインタビュー記事で、ジョーペリーがF-Keyについて述べている。インタビュアーが
「グローバーやシャーラーのペグに変えるプレイヤーが多いけれど…。」
という問いかけに、
「オリジナルのままだよ。正確にチューニング出来るし狂わないから。」
という内容のことを言っていた。 表紙では、黒ピックガードのストラトを持っていて、どうやらシャーラー製のF-keyになってからのモデルを使用していると推察。

ヒストリークギターのご主人は、
「性能としてはシャーラー製のF-keyの方が良い。しかし、ヘッドに開ける穴が大きい。」
「1976年前期以前のOriginal F-Keyをつけていたモデルでは、Tunnerの性能が落ちたり壊れたときに、穴の大きさがそのままでは性能の良いシャーラー製のF-keyが取り付けられない。」
と言っていた。

どうやら、流石のシャーラーということで、シャーラーF-keyの方が良いらしい。昔(1970年代)、ロトマチックのペグに交換するのが流行ったのも、OriginalのF-keyに不満を持つ人が多かったからなのだろう。でFenderはシャーラーにF-keyを作ってもらい、シャーラーは外見のデザインは変わらないのに、Tunnerとしての性能は上のものを提供したって事だろうか。

1976年前期以前のオーナーとしては、補修用にシャフト根元がOriginal F-keyと同じ形状のF-keyが欲しくなる。クルーソンタイプはつけたくないよね。ヒストリークギターのご主人は、ゴトーとシャーラーに「作ってくれないか?」と打診したらしいが回答はなかったということ。

Original F-keyは中古市場の高い物でしか入手できないし、シャーラーF-Keyではヘッドのシャフト穴を広げる加工が必要となるし、GOTOのクルーソンタイプにするとTunnerの性能は良いだろうが、ねじ穴が異なり新たな穴あけが必要。木の加工はしたくないよね。(^_^;)

※ 20130613:追記

なんと!ペグポストの出っ張り部を「切っちゃって」筒を取った記事を見つけた。(^O^)/
相変わらず、無茶してます・・・

 
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初出2007年03月29日 最終更新日2013年06月13日