かつて、バグのあるブロードバンドルーターを出していてその事を認めなかった企業のことを書いた。
→このメーカーの製品を買えるか
事例として雑誌記事にも書いた→
Windows ネットワークトラブルシューティング
人気があったので再録された→
Windows Server World 特別編集号 Windows Server2003システム構築の手引
どんな不具合かという詳細は上記リンクを呼んでもらうとして、簡単には、
-
LAN側に静的ルートが設定できる、つまりLAN側にルーターを設置できる、製品であるハズなのに機能しない
-
不具合のサポートができない
ということである。
コレガのフレッツドットネット対応のIPv6ブリッジ機能をもったルーターのように、LAN側にローカルルーターを設置できない(ルーティングしない)のを最初から承知で売っている製品もある。
前者と後者の相違は、一方が出来ないことを出来ると言い切ってうそつきで迷惑なのに対し、後者は出来るとは言っていない事である。ただし、出来ないとも言っていないので、サポートに電話をかけて確認するまでは判らないのが不親切ではある。→サポートで確認しました。LNA側にルーターを置くとそのリモートセグメントとブロードバンドルーターは通信できないということです。
いづれにしても、LAN側を複数ネットワークで構成している僕のようなものには利用できない。
どっちがオタッキーなんだ?!
で別のブロードバンドルーターの話である。このルーターもLAN側でのルーティングが出来ない。
「これじゃ、僕は利用できないよ。駄目ジャン!」
といったら、
「ブロードバンドルーターのLAN側にルーターで分割したネットワークを構成しているようなオタッキーとかマニアには、最初は対応しません。Unix互換OSを利用している方も対象外。まずは早く提供することが大事です。」
と説明した方がいた。まぁ、僕から見たらお客様の立場の方がその様に判断されたのだから、いいってことにしておきましょう。でも、製品購入前に購入希望者には、
「LAN側にルーターを設置した場合、(そのルーターがNAT設定で無い限り)そのブロードバンドルーターがいない側のネットワークとは通信できませんよ。」
「ローカルルーターで分けられたネットワーク(ブロードバンドルーターがいない側)にいるPCはインターネットに接続できませんよ。」
を説明するのでしょうね?
EPRT/EPSV ・・・ Extended port/Extended pasv
FTPのプロトコルでportとpasvというものがある。どんなもんかはインターネット上に説明文が多数あるのでそちらを参照して欲しい。
で、portとpasvはIPv4でのみ機能する。これをIPv6に対応させたものがEPRT/EPSVである。EPRT/EPSVはIPv4上でも機能する。それは僕も確認した。ただし、知っている限りではFreeBSDのFTPコマンドのみである。
FreeBSDのFTPコマンドは、
-
passiveコマンドで、portモードかpassiveモードかを切り替える。
-
epsv4コマンドでExtendedの有効/無効を切り替える。
-
epsv4有効時にEPSVとして有効になるか、EPRTとして有効になるかは、現在passiveコマンドにて決定されているモードがportなのかpasvなのかによる。
-
passiveコマンドで現在portモードに設定されているならば、epsv4コマンドでEを有効にするとEPRTモードになる。
-
passiveコマンドで現在pasvモードに設定されているならば、epsv4コマンドでEを有効にするとEPSVモードになる。
いずれもまずEPRT/EPSVで通信しようとして出来ないと自動的にE無しのPORT/PASVで通信する。
上記操作で、IPv4時でもEPRT/EPSVコマンドが利用できる。
FFFTP IPv6対応版・FTP4WIN IPv6対応版・Windows XP/2003では、IPv4ではPORTもしくはPASVで動作する。どちらかしか利用できないものもある。IPv4でEPRT/EPSVは動作しない。IPv6のときにEPRTもしくはEPSVで動作する。
IPv6対応のブロードバンドルーターが
-
LAN側IPv4、WAN側IPv4(現在のインターネットモデルだ)ならば、NAT使用時にportコマンドに対応したALGを実装していれば良い。
-
LAN側IPv6、WAN側IPv6(将来のインターネットモデルだ)ならば、NAT使用時にeprtコマンドに対応したALGを実装していれば良い。
-
LAN側IPv6、WAN側IPv4(こんなことしてサーバー公開しているのはオタッキーだけだろう)ならば、eprt←→port・epsv←→pasv変換が必要だ。
-
LAN側IPv4、WAN側IPv6でも、eprt←→port・epsv←→pasv変換が必要だ。
いずれも、FFFTP IPv6対応版・FTP4WIN IPv6対応版・Windows XP/2003のように、IPv4ではE無し・IPv6ではE有り、という動作で事足りる。それを、たかだかFreeBSDというOS標準のFTPコマンドでIPv4でもEPRT/EPSVが利用できるからといって、当該ブロードバンドルーターでもIPv4上でEPRTのFTP-ALGが実装されているかどうかを騒ぐのは、開発者の趣味を仕事に持ち込んだ公私混同であろう。
この程度の事を気にするのならば、ブロードバンドルーターのLAN側にルーターで仕切られたネットワークとも通信可能な機能を具備するのが先だろう?
IPv4でEPRTのFTP-ALGが機能しても僕にはまったくメリットが無い。FreeBSDを利用しているマニアやオタッキーよりも、ブロードバンドルーターのLAN側をルーターで分割しているユーザーのほうが圧倒的に一般的だと思うのだが・・・。
(DMZというのを知っているよね?)
つづく・・・
最終更新日 06 FEB 2005